ビデオグラファーという生き方|中編③
- hirovideocreator
- 7月31日
- 読了時間: 4分
更新日:8月16日
“誰かのために、映像をつくる” という初めての感覚

〜仲間と挑んだコンテストで、気づいた “伝えること” の本質〜
自分だけで撮り続けてきた映像制作。
初めて、誰かとともに一本の作品をつくるという経験が、思いがけず自分の意識を変えてくれた。
うまくいかないことも多かったけれど、だからこそ見えてきたものがあった。
それは、“ただ撮る” から、“誰かに届ける” へと変わっていく、大きな転換点だったのかもしれない。
今回の中編③では、初めて人とつくった映像を通して芽生えた想い、そして日々の中で、静かに育っていった “芯” について振り返ります。
— 手探りで始まったカメラライフと、最初の衝動

決意を持っていざミラーレスカメラとジンバル(スタビライザー)を買ってみたものの、設定も使い方もよくわからない。
とにかく外に出て、神社、公園、海……目に映るものを、ただ撮ってみた。
地味で地道。でも今振り返れば、あの何者でもなかった時間が、いちばん大切だったのかもしれない。
そんなある日、カナダに戻ってきてから数ヶ月間、触らずにいたカメラを久々に手に取る出来事があった。
あるパフォーマーの友人の存在を知り、「この子を撮りたい」と、直感的に思ったのだ。
なぜか強く惹かれた。
なにかに本気で向き合っている人は、どこかかっこいい。
思い立ったらすぐ行動。
お願いすると、彼女は快く引き受けてくれた。
偶然が運んできた、映画祭という挑戦

ある出来事は偶然を重ねてやってくる。そういうものなのだろう。
そのパフォーマーの子との撮影現場を偶然見ていた別の友人が後日声をかけてくれた。
「数週間後にショートフィルムの映画祭があるんだけど、出てみない?」
誘ってもらって素直に嬉しかった。
ちょうど次の撮影をどうしようかと模索しているときのことだった。
今回のフィルムコンテストは前回の自分が応募したものとは違い、規模も大きく、割と昔からある映画祭らしい。
72時間以内、撮影、編集、納品をするという過酷なものなのだが、迷いはなかった。
理由なんてうまく言えなかったけど、あの時の “悔しさ” をバネに今回こそは
“やってやろう ” “あの時の自分とはまた違うんだぞ”
と証明したかったのだと思う。
初めての “仲間” と作った映像

チームを組んでの映像制作は初めてだった。
自分は撮影・編集を担当し、数人の仲間とわずか3日間で1本の作品を作り上げた。
現場では、限られた時間の中で最大限のクオリティを目指す。
その中で、仲間との意見の食い違いや、意図を汲み取れない自分自身への苛立ちもあった。
夜は編集に明け暮れ、最終日の夜は一睡もできなかった。
でも、そんなギリギリの状況の中で、「誰かと一緒に何かをつくること」の面白さを、初めて知った気がした。
結果は優勝ならず。
でも2位。観客投票も2位。
数字以上に、“モノづくり” の醍醐味に触れた初めての経験だった。
映像への違和感の正体が、少しずつ見えてきた

それまでの自分は、「トランジションやビジュアルエフェクトを中心に映像をつくればかっこよくなる」と思っていた。
実際に作ってみるとかっこよく見えるかもしれないのだが、
自分の中ではどこかでいつも
「なんか違う」
と感じていた。
そして今回やっとわかった。
“なぜこの動画を作るのか?”
“誰に届けたいのか?”
その芯が抜け落ちていたことに、この映画祭で気づかされた。
映像は “かっこよさ” だけで成り立つものじゃない。
ちゃんと伝えたい想いがあって、伝える手段としての構成と映像表現がある——
「伝えるための映像」こそが、自分の求めていたものだったと、ようやくわかった。
映像が持つ “物語の力” に気づいた

どんなジャンルの動画でも、そこには物語がある。
短くても、言葉がなくても、必ず “何かを伝えようとしている”。
それは、作品を観た人の心を動かす “力” になる。
だからこそ、自分はもっとその「構造」や「伝わり方」を学び、積み上げていく必要があると思った。
映像における “目指す方向” が、ようやく見えた。
ただ、すべてが明確になったわけじゃない。
自分はこの気づきを、今いるこの場所でどう育てていくのか。
それとも、違う場所に身を置くことでしか見えないものがあるのか。
そんな問いが、心のどこかに静かに浮かびはじめていた。
その道をどう歩んでいくか──その答えは、次の機会で語りたい
続きの後編を読む
【次回予告】
ここまで読んでくださって、ありがとうございました。
この中編③では、仲間と向き合いながら初めて “誰かに届ける” 映像をつくった経験と、そこで感じた葛藤や成長について振り返りました。
次回の後編では、映像制作への想いが強くなる一方で生まれた迷いや、活動を続けるうえで立ちはだかった現実、そして “これからどう生きていくか” を静かに見つめはじめた心の内側をお届けします。
また読みにきていただけたら、とても嬉しいです。
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