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映像の構成から始まる、音の設計

  • hirovideocreator
  • 9月18日
  • 読了時間: 6分

更新日:9月22日

〜五感を揺さぶり、世界観を形づくる音の力〜


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はじめに


映像を作るとき、多くの人はまず「映像そのものの美しさ」に目を向けます。

でも実際に作品を観る側の立場に立つと、映像の印象を大きく左右しているのはです。

風の音、会話の間、静寂、そして音楽。

これらは一見目立たない存在ですが、作品全体の空気感や感情を決定づける要素でもあります。


実は以前、私がソーシャルメディアに「映像制作における音の考え方」について投稿したとき、意外にも大きな反響をいただきました。

そこで今回は、そのポストの背景にある自分の考えを、もう少し深掘りしながら言葉にしてみたいと思います。



▼この記事でお話しすること:

  1. 映像制作における音の役割

    なぜ「映像の半分は音」と言われるのか

  2. 音は五感をも構築する

    聴覚から嗅覚・味覚・触覚へ広がる体験

  3. 音の組み立て方

    BGM・環境音・効果音・ナレーションのバランス

  4. 構成から考える音

    映像を主役に据え、音で世界観を深めるアプローチ

  5. まとめ

    音と映像の関係を見直すために




  1. 映像制作における音の役割

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「映像の半分は音でできている」とよく言われます。

この言葉の背景には、私たちが映像を “見る” と同時に “聴いている” 存在だから、というシンプルな事実があります。


どれだけ映像が美しくても、音が途切れていたり、不自然であったりすると、作品全体の完成度は一気に下がってしまいます。


たとえば静かな部屋のシーンで、時計の針の音が聞こえるだけで「孤独」や「緊張感」が伝わることがあります。

逆に同じシーンでも柔らかいピアノが流れれば「落ち着き」や「温かさ」を感じさせる。

つまり音は、映像が持つ意味や感情を増幅させ、方向づける役割を果たしています。


さらに、音は視聴者を作品の世界に没入させる “入り口” にもなります。

風の音や街のざわめきなどの環境音があるだけで、映像のリアリティは一気に高まり、まるでその場にいるかのような感覚を与えてくれるのです。


だからこそ、映像において音は作品を支える大きな柱のひとつです。






  1. 音は五感をも構築する


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映像は視覚で、音は聴覚。この2つが組み合わさることで作品は完成すると考えられがちですが、実際には音は嗅覚・味覚・触覚にまで作用する力を持っています。


  • 嗅覚を呼び起こす音

    焼き肉の「ジュウッ」という音を聞くだけで、香ばしい匂いが漂ってくる気がします。雨が地面を打つ音には、湿った土やアスファルトの匂いが伴って思い出されます。


  • 味覚を刺激する音

    コーヒーを注ぐ音や、炭酸の「シュワッ」という音を聞くと、口の中にその味わいが広がるように感じます。

    麺をすする音やパンをかじる音は、それだけで味覚の想像を促します。


  • 触覚を感じさせる音

    風が木々を揺らす音で「肌に冷たい風が当たる」感覚を覚えます。

    砂利を踏む音を聞けば、足裏のザラつきを思い出します。


そしてもうひとつ忘れてはいけないのが、無音=沈黙です。

音が消えることで、逆にその場の温度、緊張、張りつめた空気が全身に伝わってきます。

たとえばインタビューで言葉の前に訪れる沈黙は、聴覚だけでなく触覚的な圧迫感さえ生み出し、観る人を深く引き込むのです。


このように、音は単なる聴覚情報ではなく、他の感覚を呼び覚まし、五感全体を構築する要素なのです。

だからこそ映像において音は、視聴者を世界観に深く引き込むための欠かせない存在となります。






  1. 音の組み立て方


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映像における音は、ただ加えればよいというものではありません。

大切なのは「どんな音を、どこに、どのくらい配置するのか」という組み立て方です。


音を大きく分けると、次のような要素があります。


  • BGM(音楽)映像全体の雰囲気や感情を方向づける。温かさ、緊張、爽快感など、感情のスイッチを入れる役割。

  • 環境音(アンビエンス)風の音、街のざわめき、鳥の声など。その場のリアリティを補強し、視聴者を空間に連れていく。

  • 効果音(SE)ドアの開閉や足音、モノが触れる音。動きや強調をサポートし、リズム感を作り出す。

  • セリフ/ナレーション直接的に意味やメッセージを伝える軸。作品によっては映像よりも情報量が多くなることもある。


これらをどう配置するかで、作品の質は大きく変わります。

たとえば自然の映像にBGMを重ねすぎれば、映像本来の空気感は損なわれてしまう。

逆に環境音だけでは単調に感じることもある。

重要なのは、映像の伝えたい軸に合わせて必要な音を取捨選択することです。


音は「足す」だけではなく「引く」ことも重要です。

あえて音を削ぎ落とすことで視覚情報が際立ったり、逆に音を積み重ねることで感情の深みが増したりする。

音の組み立てとは、まさに映像と対話しながら設計していく作業なのです。


そして私自身は、この音の組み立てを「映像そのものの構成」と切り離して考えることはありません。


まず映像の骨組みを固め、その上で音をどう響かせるかを決めていく。

これが、私が最も大切にしているアプローチであり、次の章でさらに深掘りしていきます。



  1. 構成から考える音


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私は音の重要性を十分理解しています。

もちろん、ミュージックビデオや音楽を中心に据えた作品のように、最初から音が主役になるケースもあります。


ただ、私にとっての制作は、まず映像を主役に据えることから始まります。

その理由は明快で、動画のコンセプトを迷子にさせないためです。


何を伝えたいのかを映像でビジュアライズし、軸を固めておけば、視聴者にメッセージはまっすぐ届きます。

その上で音を加えることで、映像はさらに深みを増します。


たとえば自然ドキュメンタリーで孤独感を描く場合。

  • 先に「小さな人影」「灰色の空」といった映像で孤独を成立させる。

  • その後に風の音だけを強調することで、その孤独感は一層際立つ。


逆に、美容室のプロモーション映像では「お客さんと美容師の対話」がテーマ。

  • シナリオ段階で「カウンセリングシーンを中心に据える」という映像設計を行う。

  • そこに控えめなピアノとドライヤーやハサミの音を重ねることで、“会話が主役” という構成を崩さずに表現できる。


大人数で作る映像には、分業体制だからこそ実現できる緻密さや、音と映像を同時に設計するスケール感という強みがあります。

一方で、私は一人で制作しているからこそ、最後まで映像と音を行き来しながら調整できる柔軟さを持っています。


企画から編集まで自分で担うからこそ、途中で気づいたアイデアを即座に反映させ、映像のコンセプトを崩さずに音を磨き上げることができます。


つまり、プロダクションと個人制作者にはそれぞれの良さがあります。

そのうえで私は、一人だからこそできる柔軟さと一貫性を自分の武器として大切にしています。



  1. まとめ


映像制作において音は欠かせない存在です。

視覚だけでは伝えきれない感覚や感情を補い、五感に作用し、視聴者を世界観に深く引き込む。

音があることで映像は初めて完成に近づきます。

ただし私にとっての音は「最初から主役」ではありません。


まず映像のコンセプトと骨組みをしっかり設計する。

その上で音を調整し、映像をより豊かにする。


その順序こそが、コンセプトを迷子にさせず、伝えたいことをまっすぐに届けるための方法だと考えています。


音は映像の半分を担うほど大切ですが、その扱い方は人によって異なります。

私の場合は、映像を主役に据えながら、音を最後まで柔軟に動かすスタイル。


今回のブログが、あなた自身の映像づくりを見直すきっかけになれば嬉しいです。


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