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世界観を設計するという考え方

  • hirovideocreator
  • 9月11日
  • 読了時間: 5分

更新日:9月18日

〜映像をただの情報から物語へ変える、世界観設計の視点〜

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はじめに


映像の話になると、よく「世界観」という言葉が使われます。

けれど多くの場合、それは“雰囲気”や“オシャレさ”として扱われています。


私が考える世界観は少し違います。それは単なる装飾ではなく、映像を支える 設計図 のようなもの。


「誰の物語を描くのか」「どんな感情を残したいのか」


この軸を定めることで、色や音、言葉までが自然と一貫し、映像は初めて人の心に届く力を持ちます。



▼この記事でお話しすること:

  1. 世界観とは何か  “雰囲気” ではなく、その人やモノ・コトが持つ物語としての世界観を定義します。

  2. 世界観をどう構築するのか ヒアリングを通じて被写体の物語を掘り下げ、届けたい人に合わせて設計していくプロセス。

  3. 世界観をどう映像化するのか  撮影・編集・音・モチーフ・カラーを通じて、物語を具体的な映像表現に落とし込む方法。

  4. 世界観の表現と押し付けの違い  制作者の想いを反映しつつ、余白を残して自然に届けるためのバランス。

  5. まとめ  世界観は偶然ではなく設計から立ち上がる──その思想を整理します。




  1. 世界観とは何か?


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私が考える “世界観” を一言で言えば、人やモノ・コトが持っている物語です。

そして、その物語はそのまま “人生” だと思っています。


人にはその人の歩んできた歴史があり、モノやコトにも背景や特徴、積み重ねてきた強みがあります。

そうしたものを紡ぎ直して形にすること──それを私は「世界観をつくる」と定義しています。


世界観とは雰囲気ではなく、生きてきた時間や想いを映像に込める作業

だから映像は、ただの情報ではなく“物語”として人の心に残るのです。



  1. 世界観をどう構築するのか


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世界観をつくるうえで、私が最も重視しているのは ヒアリング です。

被写体に丁寧に話を聞き、その人やモノ・コトが 「何を伝えたい存在なのか」 を掘り下げていきます。


──なぜそれが存在するのか──どんな過去や実績を持っているのか──

その人・そのブランドの強みは何か──最終的にどんな目的に向かっているのか


私はこのプロセスで、独自のヒアリングシート を活用しています。

情報を整理できるだけでなく、会話の中で被写体自身が「自分の物語」に気づく瞬間が生まれる。その気づきこそが、映像の設計に直結する大切なヒントになります。

こちらのブログでも詳しく述べています


もしビジネス的な観点が必要なら、「誰に届けたいのか」「どんな人に共感してほしいのか」といったターゲット設定も欠かせません。


こうして整理を重ねていくと、自然と「どんな動画にすべきか」「どんな世界観で表現すべきか」が形になっていきます。


アイデアから世界観を設計するのではなく、被写体の物語を掘り下げることから世界観は立ち上がる。

私はそう信じています。


そしてその上にアイデアを重ねていくことで、映像は単なる情報ではなく、その人やブランドらしさを持った物語へと形を変えていきます。



  1. 世界観をどう映像化するのか

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撮影:ショットと光が物語を語る


ショットの種類、動きと静止、光の扱い──その一つひとつが「物語をどう語るか」を決定づけます。

クローズアップは “感情の細部” を、ロングショットは “その人を取り巻く世界” を。

動きは変化を、静止は瞬間の重みを。

光は安心にも緊張にもなる。

撮影は、世界観を言葉にせずに語る 最初の翻訳作業 です。



編集:物語のリズムを紡ぐ


編集は映像全体の “流れをデザインする作業”。

テンポを速めれば高揚感や緊張感を、間を置けば余韻や安心感を生みます。

「何を見せるか」以上に「何を見せないか」を選ぶことで、映像のテーマは鮮明になり、世界観は濁りません。



音:感情を支える脇役


音は視覚だけでは補えない感情を導きます。

風の音、足音、静寂──その一瞬が映像の温度を変える。

私は音楽を脇役と捉えています。

特別な依頼やミュージックビデオを除けば、音楽が前に出すぎると「映像が曲の背景」になり、ストーリーが届きません。

音は映像の呼吸に合わせて感情を支える存在であるべきなのです。



モチーフ:繰り返しが生む象徴性


同じ色や形、風景を繰り返し登場させると、それは作品のモチーフとなり、視聴者の無意識に深く刻まれます。

一度目は何気ない要素でも、二度三度と繰り返すことで意味を持ち、世界観を支える象徴へと変わっていきます。



カラー:世界観に温度を与える


カラーは映像の “最後の翻訳” 。

物語に温度や空気感を与え、映像を「情報」から「体験」へと変えていきます。

暖色は安心や親しみを、寒色は緊張や孤独を。色は感情を設計する言語であり、余韻そのものです。

だからカラーは仕上げではなく、設計段階から意識するべきなのです。




  1. 世界観の表現と押し付けの違い


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世界観を設計するうえで気をつけたいのは、それを「表現」として届けるのか、「押し付け」として与えてしまうのかということです。


自分の中に強い世界観を持つことは、クリエイターとしての力になります。

けれど、それをそのまま視聴者やクライアント、被写体に押し付けてしまえば、映像は独りよがりになってしまいます。


私が思う世界観とは、その物語を自然に届けたい人に届けることです。

映像には「どう解釈するか」の余白を残し、受け取る人が自分なりに感じられる余地を与える。その一方で、届ける側の想いもしっかりと反映されている。


この両方が揃ったとき、映像は一方的な主張ではなく、人の心に残る体験へと変わっていきます。



  1. まとめ


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世界観は偶然に生まれるものではありません。

被写体の物語を掘り下げ、撮影・編集・音・モチーフ・カラーを通して一貫させることで初めて立ち上がります。


そして大切なのは、世界観を「表現」として届けるのか、それとも「押し付け」として与えてしまうのかという違いを忘れないこと。


届ける側の想いが反映されつつも、視聴者が自分なりに解釈できる余白を残す。

そのバランスがあるからこそ、映像は自然と人の心に届き、記憶に残る体験へと変わるのです。


私にとってスキルを磨く理由は、この世界観を守り、想いを正しく届けるため。映像は技術の積み重ねではなく、人の心にどう届くか──。

それこそが、私が「世界観を設計する」という考え方にこだわり続ける理由です。 ▶︎ お問い合わせはこちらから

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